当架空鉄道を構想するにあたって、2本のレールを車輪で走る一般的な鉄道ではなく、HSSTという特殊鉄道をシステムとして利用することにしました。当ホームページの路線自体は架空ですが、HSSTは現実の存在です。以下で簡単に特徴を紹介します。
HSSTとは
HSSTとは、(High Speed Surface Transport)の略称で、日本で開発された磁気浮上式鉄道技術の一つです。当初は、東京都心と成田空港を結ぶ空港アクセス鉄道として、日本航空を中心に研究が進められました。1990年代には、名古屋鉄道が参入し、名古屋市の大江地区に実験線が建設され、ここでは都市型交通システムとして開発が続けられました。そして、2005年には愛・地球博へのアクセス路線として愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)が開通し、日本初の、そして現在唯一のHSST営業路線となっています。
HSSTはいわゆるリニアモーターカーです。リニア鉄道というと、中央新幹線のような超高速の乗り物をイメージしますが、超電導磁石を利用し、10㎝近く浮上するリニア中央新幹線と違い、HSSTは一般的な電磁石のため浮上量は6㎜~1㎝程度です。そのため、最高速度は100km/h程度です。速度では劣りますが、都市型交通システムとしては、以下のようなメリットがあります。
現在リニモ以外では採用例はありませんが、沖縄縦貫鉄道計画で導入候補にあがっています。また、中国でもHSSTと似たような磁気浮上式鉄道が開発され、北京地下鉄S1線(ほとんど高架路線)で6両編成で営業しています。(ページ下参考参照)
仕組み
モジュール機構
・HSST車両では、モジュールという機構が一般的な鉄道車両の台車に相当します。車両のほぼ全長にわたって分散するよう配置されており、1両につき10個(左右5個ずつ)装着されています。浮上案内用の電磁石4台、推進用のリニアモーター1台、ブレーキ装置などが1つにまとめられています。
・必要な電力は、軌道側に設置されている電車線から車両側に設置された集電装置による接触給電で、直流1,500Vを取り入れています。なお、万一の停電時に備え、車両側にバックアップバッテリが搭載されており、数十秒間は浮上可能になっています。
浮上・案内
・軌道には、鉄製の浮上案内レールが下向きに取り付けられていて、対向している車両側の電磁石が吸い付こうとする力で全体が浮上します。そのままでは完全にレールに吸い付いてしまうため、ギャップセンサが毎秒4,000回の演算を行い一定間隔を保つよう電磁石を制御しています。
・左右のズレに対しては、共にU字型をして向かい合って配置されているレールと電磁石の間の吸引力がそのズレを直す方向に働く力を利用して修正しており、これが案内力となります。
推進
・リニアモーターは、通常のモーターを平たくのばしたものです。モータのコイル部分が車両側に、回転子部分が軌道側に引き延ばすように貼られたアルミのリアクションプレートに取り付けられたイメージです。車両側のN極とS極を次々に切り替えて、相対している地上側のN極とS極にそれぞれ反発・吸引する力を推進力としています。
参考
・Wikipedia「HSST」
https://ja.wikipedia.org/wiki/HSST
・Wikipedia「北京地下鉄S1線」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E4%BA%AC%E5%9C%B0%E4%B8%8B%E9%89%84S1%E7%B7%9A
・中部HSST開発株式会社ページ
http://hsst.jp/index.html
・沖縄縦貫鉄道計画で高速AGTとHSSTが候補に。内閣府最新調査
https://tabiris.com/archives/okinawarail202009/